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抜け殻正社員

日経ビジネス最新号は「抜け殻正社員」というテーマを特集に組んでいます。 これは何を言っているのかというと、現場の請負化・派遣化に伴い正社員が現場作業から管理業務へシフトしていくことにより、様々な弊害を生んでいるという事なのです。 放送業界にいた自分にとっては、まさしく数年前から直面している問題であって、特に惹かれる内容でした。 実際の例として4つが取り上げられているのですが、気になったのが放送業界とシステム業界の例でした。
たぶん皆さんは御存知だと思いますが、今のテレビ番組の殆ど全ては正社員だけでは制作されていません。 キー局であってもローカル局であっても事情は一緒で、現場の半数以上がプロダクションの人間になっています。 酷いのになると、名目だけのプロデューサーのみが正社員で他は全てプロダクション(いわゆる丸投げ)になっています。 そして、丸投げの番組は決して少なくはありません。
その結果どうなったかというと、例の「発掘あるある大事典」のようにチェックしようにもチェックできずに、捏造・やらせなどが行われた番組を放送してしまうと言う実態があります。 以前は、正社員の比率が高かったのと、番組制作に対する「モチベーション」が高かったので歯止めがかかっていたのですが、今は経費節減の圧力が下流に流れることによって「モチベーション」を期待できない状況になっています。
そんな内容も含めて放送業界の問題点が指摘されています。
システム業界に関しても以前からそうだったと思われるのですが、大手ですら自らの力でソフトウェアの開発を行うことが出来ず下請けへの丸投げ状態になっていると言うことが指摘されています。 プログラムを作れないソフトウェア会社が増えてきているという実態ですね。 これまた、正社員は名前だけのプロジェクトマネジャーに成り下がり、実際に製作するのは何層にもなった下請けのソフトウェア開発会社が行っているという事態になっているという現実があります。
幸い、情報システム部門に在職中の折に付き合いのあった会社には、ウチが発注するシステムの規模が小さいためか、そのような酷いところはなかったのですが、ツレからは良く聞く話(ツレの職場は非常に大規模なため、発注するシステムの規模も大きい)でありました。
モノを作れない製造業、番組を作れない放送局、ソフトを作れないシステム業界、何れも共通するのが正社員の管理業務へのシフトと、それに伴う現場の外注化という所でしょうか。 その結果、物作りの技術、番組制作のノウハウ、システム構築のノウハウなどが正社員の間で伝承することが出来なくなり、現場を知らない(あるいは促成栽培の)正社員が現場を天から見下ろして管理するというワケの分からない、そして非常に危険な状態になっているのでした。
何と恐ろしいことなのでしょう。
自分? 自分もノウハウを伝承することが出来ずに会社を退職することになったわけですから、それまでの蓄積されてきた情報システム部門の健全運営に関するノウハウは、今の会社には残されていません。 それは、適材適所という人事の基本を実行できなかった会社に問題があるわけで、一社員の知ったこっちゃ無いですけどね。
最後に、日経ビジネスより特集ページの最初に書かれている象徴的な文章を引用しておきます。

番組を作れないテレビ局、プログラムが書けないIT企業−。
気がつけば、日本中が「正社員だけでは何もできない会社」だらけになった。
コスト削減を優先するあまり、多くの企業が陥った派遣・請負依存の構図。
偽装、捏造、不具合が頻発するのは他人任せの“抜け殻”正社員が増えたから。

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