企業の一員として労働力の提供をしていると、そこで遭遇する事態は教科書には出ていないようなことが殆どだ。
例えば、僕が籍を置く放送局は番組やCMの素材を受け付ける際に、民放連とか我が社とかで規定した「搬入基準」に従っているかどうかが受取の判断基準となる。 基本的には搬入基準に従って作られていない素材は放送事故の元にもなるので受け取らない(作り直しを求める)。 と言うのが教科書通りの回答である。
しかし、現実にはそうは行かないケースもある。 例えば、放送日までの時間がなく、素材の作り直しをして到着を待つと間に合わない可能性がある場合等だ。 この場合には一旦受け取って放送の準備をするのと同時に、再搬入を待つ場合もある。 これは教科書には載っていない、現場としての最善の選択になる。 そして、ウチの部署で構築した放送システムは「現場としての最善の選択」をできる柔軟なシステムにしてある。 だが、系列他局の方と話をすると「何が何でも受け取らない」という教科書通りの回答しかしない局もあったのだ。 これでは、いざというときに対応が出来なくなり使いにくいシステムしか作れない。
同様に、一ユーザー企業のシステム屋の仕事をしていると教科書通りの回答をしていては仕事を増やすことになりかねない事象を多数経験する。 エンドユーザーにはコンピュータを全く活用できない人も少なからず居るのである。 そういった人に、教科書通りの操作方法を教えても9割方教えられた通りの操作を行わないものだ。 最悪の場合「適当にいじっているウチにプログラムを破壊したり、ハードウェアを破壊したり」するのである。
でも、「それって自業自得だよね」とは言えないのがシステム屋の仕事なのである。
じゃぁ、どうしたら良いのでしょうか。
実は視点を変えると、いろんな事が想定できるのである。 「こういった操作はやりがちだよなぁ」とか「こういったケースの場合の操作方法はどうだろうか?」とか、いろいろ見えてくるので事前の想定もしやすい。 事前に想定をしておくとユーザーからの質問にも答えやすいし、ユーザーが何を知りたいのかを引き出すのも容易になる。 もちろん、トラブルの対応も事前の想定が多ければ多いほどしやすくなるのである。
教科書通りの解しか持っていない場合には、直ぐに行き詰まってしまう。
じゃぁ、その多くの想定が出来るようにするにはどうしたら良いのかは…次の話。
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